「私は、なにも・・・」

「感謝、している」



もう、何者も傷つけたくない。
例え、自分自身の意識はなくとも。

この手で、この身体で、大切なものを壊すのは嫌なのだ。




自分が、自分の意識が消えた後も、この世界は変わらず在ってほしい。
まるで、俺などもともといなかったかのように、不変で。



それでいい。
そう思えた。




俺は、誰だ。




その問いも、もう問うのをやめよう。




俺は、マオだ。
そう、彼女が教えてくれた。



ただそれでいい。




それで、十分だ。