「ごめんね。本当に。悪気はないんだ」

 「あら、私はなんにも悪くないわよ?」

 「…マトイ」

 「わかったわよ…」

 彼女から離れ、手ごろな椅子に座った彼女は肘をついてそっぽを向いた。

 「…まずは…えっと…マトイがアナタにぶつかったんだよね」

 「違うわよ。そっちがぶつかってきたのよ」

 「でも上級生がぶつかったら下級生のこの子は痛いよ。転んだんだよね?」

 微かに膝が擦り剥けていたのを見て、マトイは頭を下げた。

 「マトイの口の悪さも合わせて謝るよ。ごめんね」

 「ちょっとぉ!ソヨギが謝らないでよ!」

 「…ソヨギは悪くないのに謝ってる…マトイちゃん…ちゃんとごめんなさいしなさい」

 「う…わ、悪かったわよ」

 「い、いえ…そんな」

 数々の暴言に比べればぶつかった事などどうでもよかった。

 俯く少女にマトイは続ける。