あれから2週間が経つけれど、加瀬君に返事できないでいる。

あれ以降、陽色とは目も合わなくて加瀬君とも話してないままだった。


今日、言わなきゃ・・・

今日こそ言わなきゃ。


このままでいいはずない。
毎日思いながらも、なかなか言えないでいた。

ポケットに常備されている5円玉を取り出して、答えを求めてみたけれど、そこに見えたのは…


「ん?どうして衣織?」

どういうこと?
衣織が何か悩み事?

それとも何かトラブルを引き起こす?


今自分でいっぱいいっぱいなのに。

人のことまで考える余裕がないよ。

次は何が起きちゃうの?


くたびれ気味に、

「愛紗、どうしよう」

席に座っている愛紗にすがってみた。


「もう毎日同じ質問ばかりだよ?」

机に突っ伏して、横目で陽色の席を見る。


陽色は教科書を見ているばっかりで、顔も上げない。

加瀬君と話してるのもあれ以来見てない。


「加瀬君には早く返事した方がいいと思うけど・・・加瀬君もなんだか近寄っても来ないし。他の女子にばっかり話しかけて不自然なぐらいだね」


私たちのバランスが崩れてしまった。


クラスの中でも一番目立つグループの梨央子がすごい勢いで教室に入ってきて同じグループの子にスマホを見せている。


「マジ?」

「え?じゃあ全部嘘ってこと?」

「やだあ」

「でも、何か胡散臭さいと思ってた」

「あ、わかるぅ」


グループの子達の大きなリアクションが、クラスメイトからの視線を浴びている。


「何?どうしたの?」

何人かスマホを覗き込見に行き、ざわざわがクラス内に広まっていく。


「何だろうね?」

「でもわざわざ見に行くのもね・・・」

席から動かず目だけで状況を追った。


愛紗も、私も気にはなるものの…いい噂ではないことはわかるから。

進んで見に行くこともしなかった。


「おはよ」

チャイムギリギリに入ってきた衣織に一斉にみんなの視線が注がれる。

「え?何?どうしたの?」

状況が読めない、という感じで凛子を見た。

凛子は目をそらした。