制服男子が近くに来た時、


「あれ?乃々夏ちゃん」

と、呼びかけられて驚いた。

手を振ってるのは…加瀬君だ。


「あ…」

手を振り返したその瞬間、ちょんまげと目が合った。


「相内…?」

この声、まさかね…


何度目を凝らして見ても、見たことがない人。


でも、私はわかるようになってる。声を聴くだけで、怒ってるとか嬉しいとか…

優しくて穏やかな声、大きくはないけど私どこにいたってちゃんと聞き分けられる。


だから間違うはずないの。


「陽色…?」

呼びかけると、


「おう」


そう返事した。

間違いなく、陽色みたい。

ちょっと、待って。
いったん整理させて。

家に帰って、今までのことを一から思い出したい。


だけど、

「そんなとこいないで中においでよ」


加瀬君の言葉に、近くで見たい欲求を押さえきれない私は、中へと勇み足で向かった。


「おお!女子校生?名前は?」

「いい匂いする、女子高生」


金髪、ピアス、アフロ…

ぐいくい寄って来る強面な人達。


「乃々夏です…」

「乃々夏ちゃん?可愛い」


この人達は一体…何歳なんだ?


「近いよ」

陽色が私をぐいっと引っ張ると自分の隣に座らせた。


声は陽色で顔は今まで私が追いかけていた幻のちょんまげ。


「陽色?本当に陽色?」


声は陽色なのに…


「そうだよ」

やっぱり、陽色の声だ。


通った鼻筋、口角が上がった可愛い口、いたずらっ子みたいな少年っぽい瞳。


笑うと、口が大きく開いて屈託のない笑顔になる。


ズッキュン…


生まれて初めて、ドキドキを通り越してしまった。