縁〜サイダーと5円玉と君の靴ひも〜

「在花?俺だよ、出てきて」


もそもそと小刻みに動くと、お尻だと思っていたところから顔が出てきて、みんなをあっと驚かせた。


モグラのように外の光を眩しがっている。

理仁は、野生動物を保護するかのように、じわじわと在花に近づく。



「在花。ごめんね、辛い思いさせたね」

そう言って、しゃがんで在花の手をそっと握った。


「あのね、在花が見たのは、俺じゃないんだよ。こいつ、瑠偉なんだよ」


瑠偉を指さした理仁の頭に鞄が飛んできた。


「俺じゃねえ。頼人だ」

瑠偉がうんざりした顔で言うと、


「そうだ、俺だ」

頼人が胸を張って答える。


同じ顔で実に紛らわしい。


「・・・理仁が3人。私、これがいい」

瑠偉の足にしがみついた。


「ちょっと!それは瑠偉だよ!」

理仁が叫ぶ。


「なんなんだよ。この変態女は!」

青ざめた顔で瑠偉が叫ぶと、

「在花は変態じゃない」

理仁が声を荒げる。


みんなが静まり返った。


「在花、ごめんね。テスト期間中で会えなかったんだよ。在花と付き合って成績落ちたなんて言われたくなかったから」


在花を抱き起して、髪の毛をかき分けて在花の顔を見つけ出すと理仁はぎゅっと抱きしめた。


「理仁・・・」

さっきまでの妖怪のような姿から、普通の女の子に戻った在花は涙をこぼして安心したように笑った。


「どんな妖怪かと思ったら、かわいいじゃん」

頼人が在花に近寄ると、理仁は素早く在花を腕で隠した。

「寄るな、見るな、嗅ぐな」

理仁の独占欲丸出し具合に笑えた。


在花は極めて変人だけど、大好きな人の前ではこんな風に女の子の顔になっちゃうんだね。


恋してるキラキラ感がまぶしい。


いいなあ、恋。

こんな風に私も誰かを一生懸命想える時、来るのかな。