縁〜サイダーと5円玉と君の靴ひも〜

「理仁!」


「どうしたの?」


私が呼ぶと振り向いたのが理仁ってことか。


「ちょっと、在花が大変なの。最近、在花と連絡とった?」


「在花になんかあったの?」


驚いた理仁が私の腕を掴んだ。

こんな慌てて…
よかった、理仁はちゃんと理仁だった。


「頼人だか瑠偉だか知らないけど、キスしてたの理仁だと思ってて。浮気されたってすっごい落ち込んでるんだよ」

私に言葉にすかさず、

「俺じゃねえよ」

叫んだのは瑠偉?


「あ、ごめんごめん」

瑠偉を見て謝った時、グイッと肩を後ろから引っ張られて理仁の手が腕から外れた。


「え?」

「行くぞ、家。姉ちゃんのとこ行くんだろ」


不機嫌そうな声だ。

顔がよく見えなくても、わかる。

でも、どうして不機嫌?

今はそれどころじゃなかった。


「うん」

私たちは急いで家に向かった。


まだ開けもしていない玄関のドアから思い切り負の空気を感じる。


あれを突然見る人はきっと受け入れきれない。
念のために、

「在花、本当にすごいことになっているから。驚かないでね」

前置きしてドアを開けると、巨大な苔玉が私達の前に転がっている。


「昨日より大きくなってる」

成長したの?

どういう仕組みなの?

「え?これなに?」

瑠偉が顔をひきつらせている。


もそもそと動く苔玉に向かって、

「理仁だよ。出てきて」

真剣な顔で理仁が呼びかけている、異様な光景にみんなひいてる。