縁〜サイダーと5円玉と君の靴ひも〜

ドカッと音がした。

「うぐ...」

加瀬君の声が漏れる。


「遅い・・・」

目の前の加瀬君の頭の上に鞄が乗っている。


「痛いよ、陽色」

加瀬君が陽色の顔を見上げると、鞄が下に落ちた。


いつのまにか陽色が加瀬君の後ろに立っている。


いつもよりちょっと威圧感は感じるものの、前髪が長すぎて見えない。

今、どんな顔してるんだろう。


怒ってる?あきれてる?

知りたい・・・


「さて、帰ろうか」

いつもの加瀬君スマイルで、さっきの出来事がなかったことになったような空気で加瀬君は鞄を手に立ち上がった。


やっぱりからかわれただけ?

加瀬君の軽い笑顔を見ながら、心もクールダウンされていく。


モテる人の考えることはわからない。

これまで以上に気を付けよう。


気を引き締めて鞄を持って立ち上がった時、膝の裏をカクっとされた。


「キャッ」

バランスを崩して倒れかけた私を陽色が片腕で支えた。


「隙見せてんじゃねえよ、バカ」


耳元で聞こえた陽色の声が、くすぐったくて体をよじると、

「真面目に聞け」

陽色の声が怒った。


私はちゃんと立って、

「はい」

反省してるふりをした。


ふざけたわけじゃないのに・・・くすぐったかっただけなのに。

また顔が熱い。

どうしてこんなに、嬉しくなっちゃってんの、私。


そのやり取りを加瀬君が気づかないわけないのに1度もこっちを見なかった。

不自然なほど。


いつもの帰り道を3人で歩く。

なんだか、変な組み合わせだなとは思いつつ駅へと向かう。


陽色がピタッと止まって、私は思いっきり陽色の背中に顔をぶつけた。


「痛いよ、もう!」


文句を言ってやろうとしたその瞬間、目に飛び込んできたのは・・・


「理仁・・・」

昨日と同じ場所で昨日と違う女の子とイチャイチャしている理仁。

なんで?あんなに在花のこと大好きだったのに・・・
あんな変態な姉だけど、誰かに傷つけられるのはすっごく嫌。
許せない・・・