二人に見えないようにこっそりと喫茶店の前を通過して、なんで私が隠れなきゃならいの、と決まり文句を言ってみた。


あの二人は付き合っている、そう確信した。しかも、昨日今日できたカップルって感じではなかった。


とんでもないものを見てしまったけど、やっぱりちょっとテンション上がっちゃう。

私何に巻き込まれるんだろう。


頭の中はちょんまげどころではなくなっていた。


次の日の朝、いつも通り支度をしつつ鏡の前で昨日の委員長を思い出した。

委員長と同じくらいの自分の髪を耳にかけて昨日の委員長を再現しようとしてみたけれど、どちらかというと金八先生だ。
あのキラキラ感は再現できなかった。


あれは恋をしていないと出ないものなのだろうと、恋愛初心者の私は分析した。


「おーい。もういいか?終わったか?ヒロインごっこは」


琥珀の声で我に返った。


「・・・バカヤロー!」


さすがに恥ずかしすぎてそのまま走って家を出た。


莉葉ちゃんが立っていた。


「おはようございます」


私の中では、子鹿のイメージな莉葉ちゃん。

ふわふわの柔らかい髪が風になびいて、華奢な体に細い足。

いつも少し内股で、長いまつげがバンビを思わせる。


この子からもキラキラが出てる。


「あ、あの…」


私がじっくり観察し過ぎて、莉葉ちゃんの顔が赤くなっていた。


「もう!こんなとこ立ってないで玄関入って待ってなよ、あいつ今から髪セットする気だからまだかかるよ。ごめんね、いつも」


玄関に莉葉ちゃんを座らせた。


「いえ、全然」

莉葉ちゃんは笑って首を振った。


待ってる時間さえも幸せなのか?
やばい、キラキラ感に昨日から敏感になりすぎてる。


一人家を出て学校へと向かった。