「のんちゃん、ちゃんと食べてる?ほら、しっかり食べなさい、育ちざかりなんだから」

母が小皿に肉を盛って渡してくる。

雑に盛られた肉の山。


「多くない?」

笑って言うと、


「母さんは、のんちゃんが食べてる時の顔が一番好きなの」

母は照れもせずそんなことを言う。

「なに、それ。食いしん坊みたいじゃない」


こっちが照れるし。

わざとそっけなく返すと、

「なんだかね、幸せそうでね。仕事でつらいことあってものんちゃんの幸せそうに食べてる顔思い出すと、不思議とがんばれるのよ」


大好物のビールでほろ酔いな母はいつもに増してご機嫌な感じで私に話してくれた。


「何それ、初耳だし・・・」


ああ、こんなことで嬉しくなるなんて、私はまだまだ子どもなのかなぁ。


開き直って、

「もう知らないからね。食べちゃうから、肉足りないよ!琥珀もっと肉焼いてよ。莉葉ちゃんも食べて食べて」


くすぐったいような泣きたいような気持ちをぎゅぎゅっと胸の奥にしまって、私は大声ではしゃいで見せた。

リビングのソファに座る陽色と目が合ったような気がしたけど・・・
あの眼鏡と前髪でどこ見てんだかわかんない。


私、今日のことはずっと忘れないと思う。

そう感じた。