利葉ちゃんや、理仁、真木陽色など予定より大人数になり、よっちゃんが買い出しに走ってくれて急きょ庭でバーベキューをした。


「こんな大勢でできるなんて、嬉しいよ。なんかワクワクするね」

と、母にニコニコしながら言っていた。

よっちゃんはいつだって、快く引き受けてくれるし、一番楽しそうにしてくれる。


庭付き一戸建て、これはもともと母の実家だった。

シングルマザーになった時、祖父母が二人で暮らすには広すぎるし2階に上がるのもしんどくなるから、と言ってゆずってくれたのだ。

祖父母は近くに平屋の家を建てて暮らしている。


バーベキューの間、真木陽色は相変わらずの猫背で、口数少なに黙々と食べていた。

ちょっとはおいしそうににやけた顔ぐらいしなさいよ、と心の中で話しかける。


鈍感な彼には全く通じない。


食べ過ぎてしまい、ちょっと休憩しながらリビングのソファに座っていると、トイレから帰ってきた真木陽色と目が合った。


「ちょっとぉ、なんでいるのよぉ」


私が目を細めて意地悪く聞くと、


「なんでって。在花さんにたまたま会って・・・誘われたけど、断ったら、来ないならせめてこの人形をもらってくれってあの薄汚れて目つきの悪い人形を渡して来ようとしたから・・・じゃあ行きますって」


ため息交じりに語る真木陽色が逆に、かわいそうになってきた。

真木陽色は被害者だった。


「本当にすみません、うちの姉が」

座り直し、深々と頭を下げると、

「肉食えたし、家で食べるより全然楽しかったから」


声のトーンが明るくなった。

表情は相変わらずよく見えないのだけど、ああ、これはきっと本音で言ってくれてるのだろう、そう感じることができた。


「それは、どうも。でも、在花に限らずうち変でしょ?よっちゃんは母の恋人で、年頃の娘や息子、誰一人、なんのわだかまりもなくおいしくご飯を食べてる。まあ、私たちは母が幸せならそれでいいんだけどね」


明るく話す話題でもないけれど、暗く話すような気分でもないし、妙に軽い口調で話す私の不自然さ。


むしろ私が変?


「変?」

真木陽色が首を傾げた。


「父親でもない母の恋人を何の違和感もなく受け入れられるのが不思議なんだけど。少なくとも、私は父に対してなんの罪悪感も感じないの。父の記憶がほとんどないっていうのもあるけどね・・・」