愛紗は、ただのぶりっ子ではなかった…


不器用でバカで純粋すぎるぶりっ子だった。

それがわかったらなんだか愛紗に早く会いたくなった。


「ただいま」

疲れ切って帰ると、母がバタバタとスリッパの音を鳴らしながら走って来る。


「おかえり、遅かったわね。デート?」

ニヤニヤしたこの幸せボケしている母が今日はやけに眩しい。


「はぁ?誰とデート?いないわ、そんなの。私、ブスだし」


今日のイケメン風カン違い男を思い出して思わずイライラ。


「ブスじゃないわよ、乃々夏は」

顔をムギュっとしてくる母のキラキラした顔。


私も母に似たかった…

そんな風に思ってしまう、私…
暗いな、今日はダメだな。気持ち立て直さなきゃ。


『乃々夏ちゃんはブスじゃない』

愛紗の言葉が蘇って、ちょっと心が軽くなる。