「何してんだよ、アホか?」

声の主…確認中。

え?真木陽色?

いやいや、キャラじゃなくない?

転がったイケメン風カン違い男の腕を踏んづけていますよ…


「もう大丈夫だからね」

座り込んだ愛紗を支えて立たせているのは、加瀬晴輝…?


「乃々夏ちゃんも大丈夫?」


「う、うん…」

今頃になって震えてきた。

なんで加瀬晴輝が?


わけがわからないまま立ち尽くしていると、イケメン風カン違い男は逃げるように走り去って行った。


「大丈夫?」

これは真木陽色の声。

「うん…今頃震えてきた」

自分の体を腕で抱えてぎゅっと力を入れた。


頭に何かが触れた。

真木陽色の手だ。


「遅くなってごめんな。よく頑張ったな」

頭をポンポンっとすると、いつものようにまた少し猫背な感じに戻った。


キュ…ンってなるな!

今のはシチュエーションに騙されそうになっただけだから。

違うから。


自分に言い聞かせて、深呼吸した。