とにかく男…誰か。

スマホの画面を素早くスクロールして探す。

ああ!なんでこんなに男の知り合いが少ないの!

ある意味で泣きそうになりながら、琥珀の名前が目に付いた。


部活中かも…

お願い出て、出て!

願いもむなしく留守電になってしまった。

愛紗の顔が青ざめて華奢な体で踏ん張ってはいるものの、引きずられ気味…


どうしよう、どうしよう…

私の方もパニックだ。

その時、目についた名前。

真木陽色。

そうだ、この前、在花が無理矢理聞き出して私のスマホに登録したやつ。

真木陽色、お願い出て!


「はい…誰?」


いつもより低い冷めた声、これ本当に真木陽色?

緊張しながらも、早口で話す。


「あの…私、乃々夏だけど。ちょっと、非常事態なの。その…あの…リバーサイドマンションわかる?駄菓子屋の裏とラーメン屋の裏の、来て!愛紗がヤバイのお願い、早く!早く、お願い…」


「え…」

そう、なんで俺が?的な感じだよね、わかるよ、わかる。


私だってそうなんだけど。


「あの、他に頼める人いなくて、お願い」

目の前に真木陽色がいるわけではないけど、なぜか拝む。


「…わかった…でも、ちょっと時間かかるけど行くわ」

真木陽色、なんかイケメン風に喋ってるけどあんた真木陽色だよね?