このある意味ハイテクな5円玉、私に一体どうしろと言うのか。

愛紗と一体どうなれというのか。


しかし、真木陽色といい愛紗といいなんか微妙な位置の人ばかり。

自分からあまり積極的に関わろうとは思わないような、普段から興味のない人達なのに。


凛子や衣織達や、目立つグループの人達とは関わりのない、私が言うのもなんだけど、地味だったり浮いてるような人。


こんなミラクルが起るのなら、イケメンとか見えたらもう少しモチベーションもあがるのに。


5円玉の穴に愛紗が見えたからってこの先何が起こるか、まだわからないし。とりあえずは様子見だ。


「あっれぇ、乃々夏どうしたの?今日早いじゃん」

声の主は凛子。

今日も重そうなまつ毛をまぶたにぶら下げての登場。


「あ、ちょっとね、早く家出過ぎた感じ」


安定の愛想笑いで答える。


凛子は少し興奮した感じで、愛想笑いの私の腕を掴んだ。


「ちょっと、聞いてよ。学校来る途中、愛紗が他校の男子と登校してたんだよ。学校までわざわざ送らせたのかしんないけど、マジですごいよね?あいつ」


さっき見た愛紗の表情を思い出す。


そんなに楽しそうな感じではなかったけど…

どういうこと?



凛子が私のリアクションを真顔で待っている。取り急ぎ、驚きの表情を作る。


「わ、すごいね。さすが、やること違うねぇ」

ちょっと大げさ過ぎたかな?

チラッと凛子を見ると意外と満足そう。


ホッとした瞬間。

「あ、私も見た見た。朝からモテますアピール?ウザいっつうの」


背後から衣織の声がした。

人の悪口を言わせれば天下一品!と、書かれたたすきをかけさせたい。


「ていうかぁ…噂の腹黒ぶりっ子の登場じゃん?」


衣織の肩越しに、汗だくの愛紗が廊下の向こうから歩いてくるのが見えた。


私達はピタッと話をやめて愛紗が通り過ぎるのを目で追った。