「今日はお店定休日だからね、いいのいいの」


母がいいのいいの、と頷くたびに寝癖が揺れている。


本当にそれでいいのだろうか…?


ちょっと疑問ではあるけれど。

私には今日ちょんまげを探すという大事な使命があるからこれ以上考えるのはよして、気にせず洗面所へ。

いつもより念入りに顔を洗って、母の高級そうな化粧品なんかを物色して…


「のんちゃん、何してんの」


鏡越しに母と目が合う。


なんだかすごく、険しい顔。



「…いや、周りの子たちもみんな、もう化粧とかしてるから。私だけしてないとなんか浮いちゃうっていうか」

無理に笑おうとしたけど、母の顔が怖すぎる。


「のんちゃん、みんながしてるからって流されちゃダメでしょ?のんちゃんは肌も白くて綺麗だし、いつも通り日焼け止めとリップで大丈夫よ?」


でもさ、母さん。
私だけ二重じゃないし、私だけくせ毛じゃないのよ。在花や琥珀とは違う…
私は私だと貫き通せるほど魅力のある人間じゃないんだよ。

母さんだって、私とは違うじゃない。

心の声は口に出されることはない。