「それで、私が『泥棒!』って叫んだの。そしたら、たまたま通りかかったこの正義の味方が走ってね、鞄取り返してくれて」


理仁も大きく頷いて、2人で、

「すっごい早かったんだよ?ねー!」


と、声を合わせて顔を見合わせた。


いや、この真木陽色がだよ?

無理でしょ、こんなガリ勉。走ってる姿も想像できないわ。


「は?本当にこの人が?」


鼻で笑って聞き返すと、在花のゲンコツが飛んできた。


「痛っ」

痛がる私に容赦なく在花は、


「正義の味方に向かって、何その態度は!」


と、プンプンに怒って見せる。

正義の味方って他に例えようはないのだろうか。


「だいたい、正義の味方って何なのよ」


私の言葉に在花は得意げな顔をした。

「だって、陽色(ヒーロー)でしょ?」


陽色…ひいろ…あら、確かに。

妙に納得で、でも、名前負けな感じが残念でちょっと笑える。