「おかえり」

誰だ…馴染みのない声がした。

声がした方を見ると、テレビの前のソファに腰掛けてすっかり家の景色に溶け込んでいる在花の彼氏、理仁だ。


私は半ば呆れながら、

「馴染み過ぎじゃん？」

と言うと、理仁は褒められたと解釈したのか、なぜか照れて見せた。


それにひきかえ、何なのこの違和感の塊は。

真木陽色に視線を戻すと、警戒した様子でこっちを見ている。


そもそも、なぜここにいるのか…


説明を求めて在花の方を向くと、在花は頭をポリポリ掻きながら…

「いや、ちょっね。学校の帰りに強盗にあってさ」

ヘラヘラした在花の顔と強盗という言葉のミスマッチな感じにおかしな感覚になる。


ちょっと風呂入ってくる、のテンションで強盗にあったことを報告するの…どうなの？


「ご、強盗って」

私のリアクションに満足そうな顔で在花は大きく頷いて、


「鞄を取られたの！」

また目を見開いて、


「ええ？」


リアクションする私に、


「それで、走って逃げられて」


在花まで大きな目を見開いて手振り身振り説明する。


それと、この真木陽色がどう関係するのか…


真木陽色が登場するのを、全く想像できないまま在花の話に耳を傾ける。