「ねぇ、凛子!今日カラオケ行くでしょ?」

私を通り越えて後ろの席の凛子に話しかけた。


私の上を通っていく言葉に胸が少し痛い。そしてたまらなく居心地が悪い。


私は何も聞こえていないような素振りで机を無駄に覗いた。

この言葉に反応してしまえば、私はとても痛い人になる。

気づかないふりも、痛いけどね…


「行くよぉ。乃々夏は?」

凛子が私の顔を覗き込んできた。


「え?私は…」

衣織の顔を一瞬チラ見した。

興味のなさそうな顔で、こっちを見ている。


「…ちょっと、用事あるから」

なるべく笑顔で、嘘だと気づかれないように配慮した。

なんのための配慮なんだか…と自分でも情けなくなる。


「ていうか、これ見て!」

手首にぶら下がったブレスレットを見せびらかし始めた衣織。


「どうしたの?これかわいいじゃん」


凛子が大げさなリアクションで応える。

衣織は私の言葉を待っている。


こういう時だけ…


「すごいね!かわいい」

ありきたりな反応に、不満そうな感じ。

でも、得意げな表情で、

「買ってもらっちゃった」

意味深な顔で笑った。


どういう生活してんだか…

もはや知りたくないけど。