不思議なあの5円玉と出会った神社。

ここから始まった、たくさんの縁。

たくさんの思い出。

思い返すと、高校生だったあの日、この神社で5円玉に出会えたことから、始まった。

すべてはここから始まったんだ。


振り返ればあっという間に過ぎた季節、私はたくさん悩んで、たくさん知って、たくさん笑った。

もう、あんな時間は二度と来ないだろう、そう思えるほどに平凡で退屈だった私の時間はキラキラと眩しく駆け抜けていった。




「乃々夏」


一人でベンチに腰掛ける私に、そう呼んで駆けてきたのは、陽色。


「陽色、遅い。自分で呼び出したくせに」


寒空の下、私の吐く息が白い。


「ごめん、ごめん」

笑いながら反省の色一つない感じで謝る陽色をじっと見た。


私の視線に気づいて、笑いを引っ込める。少し咳払いをして、

「今日はちょっと行きたいとこがあって」


そう言って、手を差し出した。


陽色は今年で25歳になる。と、いうことは私も25歳。


もうすっかり大人になりました。


「行きたいとこって、どこ?」


ふてくされた顔で、陽色の手を取って立ち上がった。

あのころのような初々しさは、もはやなくなり、喧嘩もまぁ…時々あったり。

泣いたことも、ある。

ダメになりそうだった時もあった。


でも、その何倍もの時間笑ってる。


8年前のその後…


陽色はあの後のテストで見事1位になり、念願のサッカー部に入部。

加瀬君も、もちろん一緒に。


卒業後はそれぞれの進路に進んで、陽色は今、英会話スクールを経営している。

夕方からは小学生にサッカーを教えるコーチもしていて、相変わらずあの無邪気な顔でグラウンドを駆け巡っている。

その姿を見ている時だけは、いつもあの頃の私に戻れる気がする。


そんな私はというと、現在は中小企業でOLをしている。

土、日は陽色の英会話スクールや、サッカーの手伝いをしたり…



愛紗は雑貨屋さんで働いていて、凛子は美容師に。

衣織はカリスマ店員として、人気ブランドのお店の店員さんをしている。
委員長は大学生の時に、藤本先生と学生結婚した。

加瀬君はお父さんの会社に入社し、バリバリ働いている。相変わらず、女性社員からの人気は高いようでモテモテライフを満喫中だ。


春岡さんは、卒業式の日に前髪を切って登校し学校中が大騒ぎになったのは言うまでもない。今は、女優への道を着々と歩んでいる。

琥珀は莉葉ちゃんと結婚して今年赤ちゃんが生まれた。
莉葉ちゃんそっくりのかわいい女の子。

在花は・・・あの後自分探しの旅に出るとか言ってオーストラリアへと旅立った。
そして今度は瞳が青いオーストラリア人を連れて帰ってきた。

理仁とは遠距離恋愛になり別れてしまった。


出会いあれば別れあり・・・少し寂しかったけど、在花が決めた道なら私は応援しよう、そう思った。