教室に戻って、陽色の周りの女子の集団に割って入る。


「何なの?」


女子たちの鋭い視線。

すみません…と言いかけて気持ちを立て直す。

彼女なのにブーイングが起きるこの悲しさ…


「陽色、ちょっと一緒に来て欲しいんだけど」


陽色に手を差し出した。

陽色が立ち上がって差し出した私の手を握った。


「ちょっと!どこ連れて行くのよ」


こ、怖い…

だから私、一応彼女なんです…


ひるむ私の手を陽色が引っ張った。


「俺の彼女いじめないでくれる?」


そう言って、陽色は私の手を引いて教室を出た。



着いたのは中庭の花壇の横。

私は陽色を見上げて、決意表明をする。


「5円玉、もう卒業しようと思って」


足の速い陽色に合わせて走ると、とてつもない息切れが…

陽色は何てことない感じだけど。


息を切らしながら陽色を見ると、笑って頷いてくれた。


「乃々夏が決めたんならいいと思うよ」


目を見て笑い合って…なんだか幸せ。なんてちょっとのろけたい気分だけど、一先ずそれは置いといて。



ポケットから缶の入れ物を出した。


「タイムカプセルみたいにするの?」



ママからもらった海外のお土産だった元々飴が入ってた缶の中に5円玉を入れた。


「他に入れるものは?」

ポケットを探すと、

「これしか入ってない」


陽色が取り出したのは、


「サイダーの蓋」

笑いながら、

「いらないか」

と言ってポケットに戻す陽色に、


「いいよ、これもいれよう?」


慌ててサイダーの蓋を缶に入れた。


「いいの?そんなので」

「うん」


初めてのキスの味だから・・・とは言えないけど。


「あとはないな。何も持ってないな。これでいいか」


陽色は靴から靴紐をとって入れた。


「靴紐?ないと困るでしょ?ていうか、これこそ微妙」

私が笑うと、陽色もケラケラ笑った。


「じゃあ、埋めよっか」


二人で穴を掘って埋めた。


「二人で、また来ようね」


どうか、ずっと二人でいられますように。