トイレに立った時、ふと5円玉を覗くと陽色が見えた。


次は誰が見えるのか…

もうこのままずっと陽色ならいいのに。

変化するのもいいけど、守り続けたいものもある、その尊さを初めて知った。


あの日、この5円玉を拾った時から私の運命は変わった、そんな気がしている。


この不思議な5円玉の導きによって、話もしたことがなかったクラスメイトが友達になったり、自分以外の人のことで一生懸命になったり、人を好きになったり…恋することを知ったり。


見た目や学校で見るほんの一部だけで勝手に決め付けて関わろうとしなかった人たち。

でも、実際は私が知っている部分なんてほんの一部だった。

むしろ思っていたのと反対だったりもした。


私にないものが、みんなにはいっぱいつまっていて、自信をなくしたり不安になったりもした。

こんなに空っぽなのは自分だけなのかって辛くて怖くなった。


私のこれまでなんて…空っぽでも、表面さえ充実しているように他人に見せられれば、それで良かった日々だった。

今、振り返ってみれば何も残っていないことに気付かされる。


空っぽの友情、空っぽの学校生活、空っぽの私。

今思えば満たされなくて苦しい日々だった。


私は誰よりも人と関わることに飢えていたのかもしれない。

本当の自分を見せられる相手をずっと求めていたのかもしれない。

何も持っていない自分を認められないでいた。


だけど、私はみんなのおかげで気づくことができた。

大切なことは、目で見えるものが全てではないってこと。

勝手に決めつけないで、ちゃんと相手を知ること。

みんなに嫌われないこと、ふつうであることは誰の特別でもないってこと。

本気で向き合わない相手には、誰も心を開かないこと。


大切なことをいっぱい教えてくれた。


このきっかけをくれたのはこの5円玉。


だけど、私にはこの5円玉はもう必要ないかな。

これからは自分で切り開いて行きたい。