学校に着くなり、陽色は話題の人。

見る人見る人、二度見していく。

私のことは誰も視界に入ってないみたい。
輝かしい彼氏を持つというのは、こういうことなのか…

お似合いカップルへの道のりはなかなか険しそうだ。


教室の中では、陽色を見て女子たちがざわついている。


「え?こんなことある?メガネの下にイケメンが隠されているなんて」


「気づかなかった。悔しい!」


「狙っちゃう?」


「ダメだよ、乃々夏と付き合ってるらしいよ」


「乃々夏ならいけそうじゃん?いきなよ」


あのね、皆さん。全部聞こえてますから。

くそぉ・・・私が春岡さんみたいな美少女だったら!

こんな言われ方しなかったのに。


こんなちっぽけな私で申し訳ない気持ち。



「すっかり話題の人だね」

愛紗が笑いながら話しかけてきた。


「ね?ほんと…」

私は仏頂面でうなずいた。


「でも、大丈夫だよ。ほら」


愛紗の言葉に顔を上げると、


「乃々夏、今日サッカーするんだけど一緒に来る?」


陽色が私の机の横に座り込んで机に肘をついて顔をのせてきた。


鼻血出そう…

自覚しろ、ちょっとは。


「かわいい、なに?あれ」


女子たちがきゃあきゃあ言ってる。


陽色、注目され過ぎてますから。


「うん」

なるべく小声で言うと、


「まじ?やった、今日もがんばれる」


満面の笑顔。

めまいがしそう。

心臓の音が、体中に響いて熱い。



「わぁ、かわいい」

ほんとね、そう。かわいいんです。


この無邪気な笑顔、これに私も落ちたんです。


「で、なんで乃々夏?」

不服そうな女子たちの顔…


もう、泣けてくる。


でも、周りなんか気にしない陽色の態度が、すこし嬉しくてまたひとつ素敵なところを見つけてしまったと顔がほころぶ。