家族プラスやや家族プラス他人が覗き込んでいる。

心配してくれているんだか、楽しんでいるんだか。

ここでは話せない。


「…うん」

急いで靴を履いて外に出た。


夜風が顔にあたって泣いた後を乾かしてくれる。


少し歩いたところにある階段に腰掛けた。
上れば小さな公園だ。


「泣いたの?」

ちょんまげの陽色が私の顔を覗き込む。

目が合ったけど、すぐにそらした。

ドキッとなる自分の胸に、もう恋は終わったんだと言い聞かせるように深呼吸した。


「あの後、聞いたんだよ。晴輝から…」

「え?」

「落し物したんだって?」


顔を上げて陽色を見ると、意外と近いところに顔があって顔が熱くなる。

私、ダメだな。
全然、まだ好きじゃん…


「なんで黙ってた?ちゃんと言えよ、一緒に探したのに」

そう言って、私の手を取って手を繋いできた。

温かい、大きな手だ。

私の手がすっぽり握られてる。

この手も、彼女のものなのか…

複雑な気持ちになりかけた時。


「え?ちょ、ちょっと」


手の中に何かある。


開けて見ると、そこには5円玉がひとつ光っていた。


「え?これ?」


覗いてみると、そこにはさっきの美少女がいる。


「何?なんであの子が?」

5円玉がどうして陽色の手から出てきたのか、あの女の子がどうして5円玉の中に見えるのか。

考え込んでいると、視線を感じて陽色の方を見ると、優しい顔をしている。

大好き、この表情。

胸がキュンとなる。


「ズルいよ、陽色は。そんな顔しないでよ」

また涙が出そう。
陽色のこと、あきらめられなくなる。


「陽色がなんとも思ってなくても、私は…苦しくなるんだよ?」


陽色にはあんな素敵な子がいる。
私のことをからかってるの?

声が震える。

震える手でスカートの裾を握った。


「なんとも思ってないわけないだろ?どうでもいい奴のためにここまでするかよ」

私が気持ちぶつけているのに、またそうやって思わせぶりな態度。

イラっとして、声を荒げる。


「だから!あんな可愛い彼女いるのに気まぐれに優しくしないでよ」


陽色を見れない。
決定的な言葉を言われたくないのに。

ちゃんとした答えが欲しいなんて。

ただ好きなだけで、よかったはずが。
どうして、好きはどんどん形を変えて大きくなってしまうんだろう。