ノラネコだって、夢くらいみる

　私じゃない？

「鈴にはそういう場所、似合わないよ」

　………！

「……なんで、そんなこと言うの？」

　気づけば涙が出ていた。大地の前で泣いたのは、初めて。

　めったに泣かない私。泣くとしても、一人、こっそりと。

　思えば、いつも大地は私に優しかった。顔を見るたびに話しかけてくれたし、この前私が陰口を言われた時は自分のことのように怒ってくれたし。

　勝手に、大地が私に優しいことに、慣れていたんだ。

　だからかな。大地なら私の夢を応援してくれると、どこかで決めつけていた自分がいた。

　……わかってる。ほんとは、私だって。自分があんな、キラキラしたセカイ、似合うような人間じゃない。

　そこにいることを客観視すれば、違和感しかない。

　だけど、決めた。そこでやっていきたいって。

　だから、後戻りはしない。

「バイバイ、大地っ……」

　そう言って、荷物をすばやくかき集め、大地の部屋を飛び出した。