ノラネコだって、夢くらいみる

 忙しいくせに。わざわざ電話なんてくれなくていいのに。………人の心配する前に、自分の心配でもしてろ。

 私は棒アイスを食べ終わると、棒をゴミ箱に捨てた。

「あのね、大地」

「なぁ、鈴」

 ほぼ、同時だった。

「な、なに?」

「鈴こそ」

 ……大地には、言おうかな。仕事のこと。詳しいことは言えないけど、心配かけてしまってるみたいだし。

「大地、先に話していいよ」

 テーブル越しに、マジメな顔で、じっと見つめられる。

「鈴、無理してない?」

 え………

「すげー疲れた顔してる。少し痩せた?」

 たしかに、元々標準よりはるかに軽かった体重は、更に減っていた。

 真夏に冬物の服を着て野外で撮影に挑んだときは、熱中症になるかと思ったし。

 早起きは苦手だから、辛いなって思うこともある。

 だけど……

「してないよ、無理なんて」

「本当に?大丈夫か?」

 ……大地?なんか、いつもと違う。

 言葉の一つ一つは優しいものなに、なぜかそこに、無性に冷たさを感じる。

「彼氏でもできた?」

「………!?」

「鈴の雰囲気がかわったのって、男の影響?」

「なに言ってるの?いないよ、彼氏なんて。私、仕事に集中したいもんっ」

「鈴、働いてんの?」

「…………!!」

 勢いで、言ってしまった。

「学校どうすんの?」

「行くよ」

「やめろよ仕事なんて。まだ中学生だぞ、俺ら」

 14歳で働いちゃいけないの?

「前に、学校に来てたグラサン……あいつと仕事してるのか?」

「そうだよ。あの人が、私のために仕事をもらってきてくれてる。その仕事が、楽しい」

「あの男、プロダクションの社長かなにかだろ」

「知ってたの?」

「………らしくないよ」

 え?

「そんなの、鈴じゃない」