ノラネコだって、夢くらいみる

 【モモ】鈴ちゃーん、お仕事どう?最近ほんと暑いね。夏バテに気をつけてね。

 こういうモモからのメッセージは、励みになった。

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 真夏にクーラーをかけて、なおかつアイスを頬張る時の贅沢さといったら、たまらない。

「鈴。体調崩したりしてないか?」

 今日は1日オフなので、大地の部屋で宿題をしている。『一緒に宿題やろう』なんて誘いを受けたのだ。

「平気だよ」

 たまりにたまった宿題、片付けないといけないんだけれど……それは、このアイスを食べ終わってからでいいや。

「なにか変わったことあった?」

「………」

「言いたくないならいいよ」

「そんなんじゃ……」

 その時、私のスマホが鳴った。

「電話?」

「うん」

「出なよ」


 【着信 逢阪社長】



「もしもし」

『おはよう。バテてねーか?』

「大丈夫です」

『案外タフなんだな』

「何か用ですか?夏休みの宿題して、忙しいんだけど」

『その割には、なにか食ってるみたいだが』

 ………!

『邪険にすんなって。せっかく心配してやってんのに』

 え……?

『月山と…それからいちるに任せきりで。かまってやれてないから』

「べ、別にかまってくれなくていい!」

 っと……大地の前で、大きな声を出してしまった。大地は、こちらを気にせず、問題を解いている。

『今度ゆっくり、飯でも行こう。食べたいものあるか?』

「………お寿司」

『了解。美味いとこ連れてってやるよ。仕事は楽しいか?』

「はい」

『なら、良かった』

「………」

『じゃーな。また』

 そう言うと、逢阪は電話を切った。

 電話の向こうからはざわついた音が聞こえてきたので、出先からかけてきたのだと思う。