ノラネコだって、夢くらいみる


「鈴」

 声をかけられ、思わずスマホをポケットにしまう。内緒話をしていて、誰かに聞かれてしまったような気分になったから。

「大地っ…」

「どうした?なんか顔色悪いけど」

「え?全然そんなことないよ」

「これから教室戻るけど、一緒に行く?」

「う、うん……わっ」

 動揺しすぎて、思わず私は、階段を踏み外してしまう。

 こける……!

「マジで大丈夫か?」

「………うん」

 大地が抱えてくれて、間一髪で助かった。

「じゃーな」

 大地と、教室の前で別れる。

「いちる、いつか絶対表紙くると思ってた!」

 教室に入るや否や、会話が聞こえてくる。私が戻ってきたことには気づいていない様子で、夢中で話をしている小田木さんと和泉さん。

 ……あれ?モモは?モモの姿がない。

「ってかー、茉由ってさ」

 小田木さんが、モモのことをもう下の名前で呼んでいる。

「なんで黒川鈴なんかと一緒にいるんだろ」

 …………!

「そうだよ。全然タイプ違うじゃん」

 和泉さんも、のっかる。

 話題が変わっていたのは有り難いけど、この空気の中戻っていいものかわからない。

「可愛い茉由が、あのブスと一緒にいるのが不思議で仕方ない」

「ほんとだよ。あの根クラ、うちのクラスに誰一人友達いないくせに、他のクラスに友達作るなっつーの」

 うわぁ……私がいないと思って言いたい放題……

「もしかして、あの子、茉由の引き立て役だったりするの?」

___!!

 引き立て役………?

 …………

 モモ………

「黙れブタ」

 !?