ノラネコだって、夢くらいみる


 昼休み。

 モモが、うちのクラスにやってくる。すると男子の何人かがモモを見る。可愛いから、目立つのだ。

「今日もそれだけ?」

 モモが、またクッキーみたいなものを食べている。それも1枚だけ。

「ダイエットしてるんだけど、あと2キロがなかなか減らなくて」

 ダイエットする必要あるのだろうか?

 モモは、肉付きがいい……どっかのグラビアアイドルにいそうな体型。だからって、太っているわけではない。

「どうして脂肪って、お腹からついて、胸から減ってくのかなー」

「知らないよ、そんなの」

 つくほど脂肪がない。どこにも……。

「いいな、鈴ちゃんは細くて」

 胸は水平線ですが、なにか?

「そうだ、今日ね、CUTEEN!発売日なんだよ!」

「ふーん」

「来る途中、コンビニで買ってきちゃった」

 そう言ってモモが、鞄から1冊の雑誌を取り出す。

「なんとなんと!表紙は……いちるっ!!」

「そうなの?」

「じゃーーーん!凄くない?表紙だよ!」

___!?

 コホコホ、と蒸せる私。

「大丈夫?ご飯、へんなとこ入った?」

「だ、大丈夫……」

「百瀬さん、もう買ったの?」

「いいなー!見せて!」

 クラスの女子が2人、モモに近寄ってくる。

 たしか……小田木(おだき)さんと、和泉(いずみ)さん。

 2人はクラスで1番スカートが短い。浅倉に目をつけられてそうな標準丈を完全に無視した、改造スカート。裾を切ってしまっているのだろう。

 あんなんじゃ、足も組めないんじゃない?

「いいよ。一緒に見る?」

 2人が椅子をもってきて、4人で雑誌を囲んでみる。

 グループができている。その中に自分がいる。

 ……そんないつもと違う日常に違和感を覚えている余裕など、今の私には微塵もない。