ノラネコだって、夢くらいみる



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 それから2週間ほどたった、夏休みも近い、そんなある日。

 私は特に仕事もなく、普通の……いや、人より地味目な中学生活を送っていた。

 クラスに友達もいなければ、特別勉強ができるわけでもない。

 奇抜な格好をしていない今、周囲は私のことを〝問題児の黒川さん〟でなく〝根クラな黒川さん〟とでも思っていそうだ。

 そんな周囲の視線を気にせずぼっち生活を満喫できるのは、唯一の私の特技かもしれない。

「もう、遅れちゃうよー」

「待って待って、教科書どこ行ったかな?」

「先行ってるよ」

「やだー、待ってよぉ」

 近くの席の女子たちの会話が聞こえてくる。

 そんな子たちの横を平然とスルーして教室を出る私。

 ぼっちの特権の1つとして、こういう蟠(わだかま)りがない。

 自分のペースで行動できる、なんて快適なことだろう。

「よぉ、鈴」

「……焦げたね」

 廊下でバッタリ大地と会う。大地はバスケ部だけど、よく日に焼けていた。外で走ったりするからかな。

「お前は、相変わらず真っ白だな。引きこもってばっかか?」

 そんなこともない。あれから週末がくると、いちると遊んでいた。

「っと、いけね。急がないと遅れるな。またゆっくり話そうぜ」

「……うん」

「なぁ、鈴」

「なに?」

「お前……なんか、変わったな」

「え?なにが?」

「わかんねーけど。雰囲気が、前までと違う」

 なにそれ。