ノラネコだって、夢くらいみる

「無理」

 頭で考える前に、自動でそう答えていた。

『僕のこと、嫌い?』

「嫌いじゃない」

『側にいて、やだって思った?』

「……思ってないよ」

『僕、顔は悪くないと思うんだけど』

「自分で言うな」

『鈴のこと、大切にするから』

「………」

『仕事の邪魔になるようなことしないし』

「………」

『こういうこと、電話でなくて、ちゃんと言いたいから。また、来てよ。待ってるから。僕から行ってもいいなら、行くよ。今からでも』

「こ、こなくていい!おばあちゃん、びっくりするよ、いちるみたいなイケメンが家になんてきたら!」

『じゃあね。ゆっくり休んでね』

「ま、待って、いちる!」

『んー?』

「………ごめん。私、やっぱり、いちると付き合うとか……考えられない。これから色んなこと勉強しなきゃならないし、多分、恋愛とかしてる余裕ない……」

『マジメだね、鈴は』

「不器用なだけよ……」

『わかった。じゃあ、頑張る』

 頑張れ、じゃなくて、頑張る…?

「なにを?」

『僕に恋してもらえるように、がんばろーっと』

「い、いいよ、頑張らなくて」

『鈴、なんでも一人で抱えちゃだめだよ?』

「え?」

『この先、仕事でわからないこととか悩みとかでてきたら、ちょっとは僕の方が経験あるし、アドバイスできるかもしれないから。なんでも言ってね』

「…………ありがとう」

『余裕がでてきたら、付き合おうね♪』

「…………!」

『じゃあねー、鈴』