ノラネコだって、夢くらいみる

「なにそれ……」

「ただし、付き合うなら、こっそり頼むぞ」

 禁止って言ったり、いいっていったり。勝手な人。

 モヤモヤしたような、苦しいような、よくわからない気分になる。そして、胸がきゅっと締め付けられる。なにこれ…

 目の前でソファに横たわる色男を自然と睨みつけてしまっていた。

「怒ったのか?」

 怒った………?

「こっちこい」

「私、帰ります。自力で起きて下さい」

 今はもう、逢阪の顔が見たくない。側にいたくない。きっと、自由すぎるこの男に苛立ちを覚えたのだろう。

 スルーすればいいものを、私ったら、ムキになって睨んでしまうとは…。相手は社長なのに。

 こんなプライベートな場所で、プライベートな会話なんて、すべきじゃないのかもしれない。

 離れよう。離れなきゃ。

「おいで、鈴」

「………!」

 どうして私のこと、放っておいてくれないんだろう。あと30分寝たいんでしょ?

 帰ろう。帰らなきゃ。そう思っても……抗(あらが)えない。この人の言葉には。

 私は、逢阪のすぐ隣に、すとんと腰を落とした。

「初カレにするには申し分ないだろ?」

 いちると付き合えって言うの?

「仲立ちする気ですか?」

「俺的には、いちるなら、全然ありだ。あいつのことは信用してる」

「………」