「り…ん………」

 起きたっ!

「………おすし…いっぱい……食べてね」

 すー、と寝息をたてている。なんだ、寝言か。って、私は夢の中でもお寿司を食べているの?

 私はいちるを起こしてしまわぬようそっとベッドから降りると、布団をいちるの胸元までかけ、部屋を出た。

 すると私はまたそこで、ぎょっと驚くことになる。

 リビングの床に倒れている、一人の男。

 スーツを着たまま、うつ伏せで。まるでサスペンスドラマのワンシーンである。

 ………逢阪だ。

 ジャケットだけ、1メートルほど離れた場所に、脱ぎ捨てられている。

 ……生きてるよね?顔を覗き込むと、息をしていたので、一安心。

 6月とはいえ、今朝は冷える。風邪ひくよ……。

 ……ってか、私が逢阪の寝床を占領していたからかな?だとしたら、こんなところで逢阪が寝てしまっているのは、私のせいだ。

 申し訳ない気持ちになりつつも、せめてソファで寝るという選択肢はなかったのだろうかという疑問を抱きながら、ジャケットを拾いそっと逢阪にかけた。

 その時。

 パチり、と逢阪が目を開けた。