………洗い物をしながら、こんな面倒なことを毎日毎日してくれているおばあちゃんには、本当に感謝しなければ、と思う。

「鈴、まだー?」

 カウンターの向こう、リビングからいちるの声が聞こえてくる。

 背中を向けていてハッキリと見たわけじゃないけれど、多分今やっているのは、サッカーのゲーム。

 ゴール!とか、聞こえてくるから。

「まだだよ」

「あと何分ー?」

 知るか。

「1時間」

「えー、そんなかからないでしょーっ」

「1日」

 いちるが大人しくなった。私のいい加減な返事に答えるのが嫌になったのかな。

「泊まってくってこと?」

___!

 耳元で、そう囁(ささや)かれる。

 いちるが、いつの間にか私のすぐ後ろに立っていた。

「いきなりそんなとこから声かけてきたら…ビックリするでしょ」

「きっちり片付けてくれるんだねー、鈴は」

「当たり前のことをしているだけ」

「いいお嫁さんになりそうだね」

 いちるは、洗い終わった食器や寿司桶なんかを、隣でふいていく。

「鈴、夢ってある?」

「夢?」

「そう。この業界に入ったってことは、ここに何かやりたいことがあるからなのかなって思って」

「………」

 夢、かぁ。

「ない」

「そっか」

「ただ、色々なことに挑戦してみたいな、とは思う」

「例えば?」

「わからない。わからないけど……私のね、おじいちゃんとおばあちゃんが、私のこと応援してくれてるの。私の活躍、楽しみにしてくれているの」

「鈴は、おじいちゃんおばあちゃんっ子なんだね」

「いちるはどうなの?あるの?夢」