ノラネコだって、夢くらいみる



 【Q.仕事仲間(男)に突然キスされました。】

 こういう場合、怒るべき?泣くべき?それとも……

 ああぁぁあ。知恵袋で聞きたい。ネット上の相談室みたいな場所。

 そこに聞きたいことがあれば私のような子供でも質問を書き込め、それを見た誰かが回答をくれる。

「どうした黒猫、全然食べてないじゃないか。寿司は嫌いか?」

「……好き」

 こうなったら、やけ食いだ。

 私は、高そうなものから取ってやった。ウニに大トロ。

 ……美味しい!

 ファーストキスを奪った張本人は、のんきに目の前で、お寿司なんて食べていますが。

「鈴、なに?」

 首をかしげ、こっちを見るいちる。

 あなたは、どうしてそんな平気でいられるの?

「おっと、失礼」

 逢阪の電話が鳴り、逢阪がポケットから取り出したのは……

 スマホとガラケー。

「こっちか」

 そんなことを言いながら、2つ折りのガラケーを開けて電話に出る。

「………はい、ああ、上田社長。お世話になっております!」

 こんなにハキハキ喋っている逢阪を見るのは、初めてだ。

「今からですか?ええ、大丈夫です。ええっと…そうですね、20分もあれば伺えるかと思います。はい…はい、それでは、またのちほど…失礼致します」

 そう言って電話を切ると、突然服を脱ぎ出した。

 おいおいおい!

「ちょっと、行ってくる」

 そう言いながら、素早くスウェットからスーツに着替える逢阪。

 さっきまでTHEスウェット族だった逢阪が、一気にビジネスモードになる。

「わりーな、いちる。せっかく寿司とってくれたのに」

「いえ。鈴もいるから大丈夫ですよ」

「……いちる、変な気起こすなよ」

 ?

「わかってます、社長」

 ??

「次は、ないからな」

___!

 そう言うと、逢阪は部屋を出て行った。

 バタン、と更に玄関の扉が閉められた音がした。

「ねぇ、いちる、次は……って」

「見られてたんだろうね」