ノラネコだって、夢くらいみる

「固まっちゃった、鈴」

「………」

「もっかいする?」

 え?

 すると、再び、いちるの顔が私の顔に近づいてきて___

「………!?ストップ……!」

「えー。僕はもっとしたいな」

 いや、あのさ。いちる。

 あなたが非常にマイペースな人間だというのはよくわかったけれど。

 さすがに……これは…………

「だめ?」

「………だ……」

 だめに決まって……


___バタン


 扉の閉まる音と共に、意識がハッキリと現実に戻ってきた。

 逢阪だ。

 奥の部屋から、逢阪がやってきたのだ。

 見られてた……!?

 い、今の…いちるとの………キス………

「来てたのか、黒猫」

「く、黒猫じゃないっ!」

「お前、まずは『おはようございます逢阪社長』だろ」

 けだるそうに出てきた逢阪は、上下スウェット姿だった。

 新鮮……いつもお洒落な格好しているのに……

 って、そんなことはどうでもいい。

 見られてたの?見られてなかったの?

 ………いちるとのキス。

「いちる、腹減った」

「そう言うと思ったので、出前とりました」

「お。さすが」

 それだけ言うと、奥の扉をあけて、どこかへ行ってしまった。

「……ねぇ、いちる。あの人どこ行ったの?」

 いちるの目を見ることができない。

「シャワー浴びにいったんじゃない?」

 自由人め。

 逢阪といい、いちるといい、自由すぎる。

 その時、部屋のインターホンが鳴る。


「きたよ。鈴の大好きなお寿司♪」