ノラネコだって、夢くらいみる

「もしかして車使わなかったの?」

「そんな贅沢なことできない」

「タクシー代くらい僕が出してあげたのに」

「別に、そんなことしてもらう義理ないから」

「鈴がうちに来てくれるとはね」

 ニコニコしてるいちる。

「いちるが呼んだからでしょ」

「先輩命令だから来たんだ?」

「……そういうわけでもない。嫌だったら来ない」

「ってことは、嬉しかったんだ」

「………!お寿司が大好きなの!」

 いちるは白くて長いソファに腰かける。

 突っ立ったままの私をこっちこっち、と手招きするので、いちるから少し離れて座る。

 すると、いちるが私に近づいてきた。ちょ、寄ってこなくていいから…!

「社長がいたから来たの?」

「バカなこと言わないで………ちょうど暇してたし」

「鈴は、暇だったらこうして、男の部屋にくるんだ?」

 !?

 いちる、顔が近いっ…!

 ぐっと近づいてくるいちるを避けようにも、ソファの端っこに追い込まれる。

 いちる……って……すっごく…

「肌、綺麗」

「え?」

「すっぴんだよね?なんでそんなすべすべな感じなの?男の子って、いつヒゲはえるの?」

 すると、いちるが、ぷはっとふき出して、私から離れた。

「なんで笑うの?」