ノラネコだって、夢くらいみる

 目の前には、日常からほど遠い光景が広がっている。

 人がたくさんいる。

 『きゃぁぁぁ!!』という悲鳴も、聞こえてくる。

「………ねぇ、モモ。ここは?」

「夢の国だよー♪」

「………」

 そう。私は、モモと、遊園地に来ていた。

 子供から大人まで楽しめる、この場所。

「晴れてて良かったね。梅雨なのに〜」

「さっきのチケット……」

 私は、モモにもらったチケットで入場した。

 モモは年間パスを持っていたみたいだけど……

「いいのいいの。もらいものだから、気にしないで。さ、楽しもー♪」

 昔、おじいちゃんとおばあちゃんに一度だけ連れて来てもらたったっけ。

 懐かしいなぁ……今日は土曜日だから、家族連れも多い。

 私には、父母と出かけた記憶がない。正直なところ、こういう家族団らんという雰囲気の場所は得意ではない。

 だけど……

 ニコニコしているモモの顔を見て、少し和む。こうして友達と出歩いた経験がなかった私。

 億劫さや拒否反応以上に、嬉しさがこみ上げてくるのがわかった。

「あれ、乗ろう!」

 モモが指さしたのは、落下型の絶叫マシーン。見ただけで、気絶しそうなレベルの。

「む、無理……絶対無理!」

「ひょっとして鈴ちゃん、怖いの苦手?」

「勘弁して……」

「………よし、乗ろう!」

 !?