ノラネコだって、夢くらいみる

「お帰り、鈴ちゃん」

「……ただいま、おばあちゃん」

「お仕事お疲れさま」

「疲れたから寝るね」

「ご飯は?」

「……明日食べる」

「わかった。お風呂湧いてるわよ」

「ありがとう。入って寝る」

 **

 お風呂からあがった私は、階段をのぼって2階の部屋に上がると、ベッドにそのままダイブした。

 なんだろう。寝る、なんて言ったけど……

 今夜、眠れそうにない。

 眩しい程に明るい空間。

 そこに華やかな衣装、そしてプロの技術で飾り立てられた私がいた。

 たくさんのスタッフさんに囲まれた。

 たくさん気を使ってもらって。


___23時30分


 ベッドに横になって随分たつのに、眠気がちっとも襲ってこない。

 授業中に突然襲ってくるあの睡魔が、今きてくれればどれだけいいか。

 寝てはいけない時に限って眠くなる。

 今日の写真、どんな仕上がりになるんだろう。

 あの写真、雑誌に載っちゃうんだろうか。


〜♪


 スマホが鳴る。

 こんな時間にかけてくる非常識野郎は、多分あの人。

 スマホを手に取る。


【着信:逢阪社長】


 やっぱり……


「もしもし」

『お疲れ』

「……お疲れさま」

『お疲れ様です、だろ』

「どうして来なかったの?今日」

 逢阪は、現場に現れなかった。〝あとから行く〟って言ったのに。