ノラネコだって、夢くらいみる

 それから、私はモモと連絡先を交換して、教室へ戻った。

 このクラスで私に話しかけてくる者はいない。

 あの日、逢阪の車に乗り込んだところを目撃した人が、この中にいるかもしれない。

 だけど、直接そのことについて聞いて来たのは、モモくらい。

 あと、大地。

 大地には、事情は話せないが、あの男にはお世話になっているということだけ伝えておいた。

 
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 授業後、掃除の時間、スマホに着信が入る。

 私は一人、講義室を掃除していた。他の子は、サボってどこかへ行ってしまったから。

『学校終わったか?』

 逢阪。

「掃除中だけど」

『手短に話す。これからそっちに迎えをやるから、その車に乗れ』

「え?今日、お仕事あるんですか?」

『都合悪いのか?』

「いえ……」

 むしろ金曜日だから、都合がいい。多少疲れても、翌日に困るようなことはない。

『リラックスしてのぞめ。……と言いたいところだが、結構無茶言ったから、お行儀よくしてくれ。絶対に噛み付くなよ。俺もあとから行く』

 ………私は猛犬か。

 私は掃除を終え教室へ戻ると、皆が窓の外を見ている。

 うちの教室からは、校門が見える……。

 嫌な予感がした。

「車とまってるね。なんだろう」

「珍しいね」

 まさか……

 先生の挨拶が終わり、解散すると、一目散に校門を目指した。

 途中廊下で大地やモモとすれ違ったけれど、バイバイ、とだけ言うと私は走って行った。