ノラネコだって、夢くらいみる

 契約書。それから、会社の経営方針なんかが書かれたパンフレット。

 雑誌も何冊かある。これ……逢阪プロのタレントが載っているやつだろうか。

 おじいちゃんもおばあちゃんも、こういうの絶対読んだことないよね。

 私のために、目を通してくれたのかな。

「鈴の気持ちがわからないうちは、同意するわけにはいかないな」

「おばあちゃんもよ。やりたくもないことを、逢阪さんに脅されてやるっていうなら、二度と鈴ちゃんに近づかないでもらうから」

___欲しいものを諦めるのは、得意だ。

 小学校の時、流行のオモチャがあった。それは子供用タブレットのようなもので、子供が持つにはなかなかの高級品だったのだけれど。

 クリスマスや誕生日プレゼントという名目でクラスの子たちが次々に手に入れていって。

 そんな中、優しいおじいちゃんは、どこから知ったのかはわからないけど、そのオモチャを買ってやると言ってくれた。

 けど、わざと興味ないフリをしたっけ。

 おじいちゃんが汗水流して稼いでくれたお金で、ガラクタを買わせるわけにはいかないって思ったから。

 ほんの少し好奇心はあったけど、そんなもの、すぐにかき消すことができた。