ノラネコだって、夢くらいみる

「おばあちゃんはね、なにも、中学生のうちからお仕事する必要はないと思うの」

「だからと言って、わしらが鈴の将来を決めるわけにもいかないと思ってな」

　おじいちゃん…おばあちゃん……

「どうなんだ？鈴」

　おじいちゃんに、まっすぐ見つめられる。

「逢阪さんの元で、働きたいのか？」

　私は…………

「無理だよ」

　できるわけない。私みたいな子供に、お仕事なんて。

　それも、あんな、キラキラなセカイで。

　逢阪という人物が、どれだけ優れているかなんて関係ない。

　私は、平凡な中学生。特技など、ない。

　趣味といえばネトゲやアニメという引きこもり街道まっしぐらなものしかない。

　せいぜい世間に反抗して、満足しているくらいのことしかできない。

　それが、黒川鈴という、14歳の少女。

　私、ちっぽけだなぁ……。

「鈴、顔をあげなさい」

　おじいちゃんが静かにそう言った。

　そして私は、ゆっくり顔をあげる。

「無理、というのは、やってみなきゃわからないんじゃないか？」

　え？

「そうよ鈴ちゃん」

　おばあちゃんが続けて言う。

「おばあちゃん、逢阪さんて人が最初どんな人かわからないうちは、何も信じられないって思った。だけど今はね、鈴ちゃんのこと、よくわかってくれてるんじゃないかって思うの」