ノラネコだって、夢くらいみる

 逢阪の車が、私の家の前に着く。

 一瞬、どうして家の場所を知っているんだろう…と思ったが、この男が手段を選ばないというのは早くも学習していたので、どうせ優秀な手下にでも調べさせたのだろうと、ひとりでに納得することができた。

「送ってくれて、ありがとう」

「時間をやろう」

 時間?

「3日待つ。その間にお前から俺に連絡がなければ、きっぱり諦める」

「………!」

 強引だと思ったら、今度は突き放す。ずるい。

「声をかけられたからとか、会いに来られたからとか、そういうのじゃなくて。お前がどうしたいか、何がやりたいか。ちゃんと決めてみろ」

 私が、何をしたいか。そんなこと言われても、わからないよ。私、まだ中学生だよ。

「……ねぇ、あなた、どうして社長になったの」

 持ってるんだよね、国家資格。
 
「中二病が発症して」

「ふざけないで」

「ふざけてないさ。人生は一度きり。なら、やりたいことやればいい」

「やりたいこと……」

「ないのか?お前には」

「………」

 私の、やりたいこと?

「………考えてみる」

 逢阪は私の返事を聞くと少し微笑み、車へと乗り込むと、窓を開けてこう言った。

「連れ回して悪かったな。それじゃ、おじいさんとおばあさんに、よろしくな」

 そう言って、車を出発させてしまった。