ノラネコだって、夢くらいみる

「行こうか」 

 逢阪が戻ってきたので、私はスタジオを後にし、また逢阪の車に乗り込んだのだった。



 車が走り出す。次はどこへ向かうというの?

「感想は?」

「………」

「やる気出たか?」

「……あんまり」

「やりたくないなら、それでいい。だが俺を納得させてみろ」

 納得?

「お前が本気で出した答えなら、俺は受け入れる」

「………」

 私のいる場所は、日陰。あそこは日向。あんな場所に私が行っていいものか……わからない。

「〝面白そう〟__って思ったろ」

「…………!」

「あんなにガン見してて、興味ないとは言わせないぞ」

「私の人生……狂わせる気?」

「人聞きが悪いな」

「ってか、もう、狂い始めてる」

 あんなとこ、行く気なかったのに。場違いにも程がある。

「もっと狂ってもらおうか」

「この、ドS野郎」

「なら、そんな俺にのこのこと着いてきたお前は、ドMだな」

「………違う!」

「やりたいってなら、俺は、全力でお前をサポートする」

 そんなことを言われても、すぐに決断できるわけもなく。

 そのあとの車内は、静まり返っていた。

 ただ車内に流れるメロディ、どこの誰の歌声かはわからない洋楽が、私の心をほんの少し、穏やかにさせてくれた。