ノラネコだって、夢くらいみる

 化粧の濃い、肩までの茶色いストレートヘアのその人、黙っていれば綺麗な大人の女性に見えるのだが……

「たっちゃんがお友達連れてくるなんて珍しいわね」

 男だ。年は30くらいだろうか。いや、もっと若いかな?

 その人が、逢阪と握手をしている。それから、こっちを向いたので、私は慌てて頭を下げる。

「たっちゃんの隠し子?」

 何を言い出すんだこの人……と、脳内で突っ込んだのとほぼ同時に

「まーな。内緒にしとけよ?」

 逢阪が、真顔でそう答えた。何言ってくれてるのよ。

「違いますっ…私、この人とは赤の他人です」

「ふふ、わかっているわよ。こんにちは」

 そう挨拶されたので、こんにちは、と返す。

「いちるの様子見にきたの?」

 いちる?

「ああ。どう?やれてる?」

 あの美青年のことだろうか。

「絶好調よ」

「そう」

 その後しばらく逢阪が挨拶にまわっている間、私は隅っこの方で見学させてもらっていた。
 
 こんな現場にただの中学生の私がいるなんて、違和感MAX。

 はやく立ち去りたい………。

 だけど……

 よくわからない感情が押し寄せ、身震いしてしまいそうになる。

 同時に、未だかつて抱いたことのない程の好奇心が押し寄せてきた。

 ……どうして?目が、離せない。

 逢阪に声をかけられなければ、拝めることのなかった光景。

 キラキラしたセカイ。