ノラネコだって、夢くらいみる

 図星だった。

 私には、特別誇れる才能がない。

 自信なんて、湧くわけない。

「で、鈴は俺のこと、どこまで知ってるんだ?」

「……逢阪竜也(おおさかたつや)、28才」

「正解」

「東大に現役合格」

「それも正解」

「司法試験に一発合格」

「天才ですから」

 そんな台詞、某アニメキャラしか言っているのを聞いたことがない。

「独学で経営の知識を身に付け、25で起業。人気タレントを複数世に出す。経営者でありながら〝イケメンすぎる〟と話題沸騰」

「お前……」

「なによ」

「俺のこと大好きなんだな」

 そう言って、ニヤリと笑う逢阪。

「………バカなの?」

「照れるなって。そう顔に書いてある」

 チラっと横目でこっちを見る。

 ………は?

 慌てて鞄から鏡を取り出し、自分の顔を確認する。

「別に、いつも通りだけど」

 そう言って逢阪の方を見ると、逢阪がぽかんとしている。

 え?

 次の瞬間、逢阪が大笑いした。

「なんで笑うの?……あ、ちょっと!信号変わった」

 車が再び進み始める。

「言ったろ、恋愛禁止って。たとえ俺が相手でもな」

「……!!だっ……、誰があんたに恋するか」

 この、自意識過剰め。

 セカイにあなたと2人きりになったとしても、好きになるものか。