ノラネコだって、夢くらいみる



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 渋谷の街を歩くと、大きく掲げられているメンズエステの広告看板に、いちるの姿があった。

「りんりんー!」

 知らない女子高生が声をかけてくる。

「見たよ、番宣。映画絶対見に行く!」

「……ありがとう」

 私も、もっと大きくなりたい。
 


「お待たせ、鈴」

 私が席に着いた数分後、いちるはやってきた。

 路地裏にある小さな喫茶店で、いちると待ち合わせしていた。おじいちゃんマスターが一人できりもりしていて少しさびれた趣のあるお店。

「ううん、今来たとこ。見たよ。すごいね、渋谷の看板」

「エステなんて柄でもないけどね」

 そう言ってサングラスをはずすと、いちるは相変わらずとびきりカッコイイ王子様みたいだった。

 いちるの美貌は天然ものだ。

「でも、無料で体験させてもらえたりするの?」

「そうだね」

「いいな。ちょっと、やってみたい」

「いいじゃん。鈴はどんどんキレイになってるし」

「え?」

「いい感じなの?社長と」

「………!全部、知ってるの?」

「見てたらわかるよ。僕の付け入る隙はないってことくらい」

「ごめん、いちる。私、ずっとあの人のこと好きじゃないとか…否定してたくせに……こんな……」