「黒猫が、黒猫飼ってる」

 そう言って、逢阪が鼻で笑う。

 膝に乗せているピンクのリュックについた、黒猫のキーホルダーを見て言ったのだ。

「私は黒猫じゃない」

「失礼。黒川鈴さん」

「どうして名前」

 ……さっきも、私のこと名前で呼んだよね。

「調べさせてもらった」

 個人情報保護法ってなんだろう。

___その時。鞄の中でスマホが震えた。

 取り出しメールを開くと、大地が心配してくれていたので、【心配無用】とだけ返信。

 大地には『ちょっと行ってくる』なんて言い残して来た。

 さっきから、妙に落ち着かないのはなぜだろう。

「どこ行くの?中学生の貴重な時間奪うんだから、楽しませてよね」

「強がりなのは、臆病だから」

「………!」

「臆病な自分を隠す為にわざと強気に出る。そんなとこか?」

 そう言ってチラリとこちらを見る逢阪の表情は余裕一杯。

 サングラスのその奥で、薄笑いしているようにも見える。

 なにもかも見透かしたような目で見るなっ……!

「そんな毛を逆立てなくても」