逢阪がぽかんと口を開けた。

「や、やっぱ今のナシ。なんでもない」

「鈴……」

「帰るっ」

「待て」

 手首を掴まれる。

「鈴」

「は、はい」

 なんで敬語なんだ私。いや、上司に敬語は当たり前だけれど、普段タメ口のくせにこのタイミングでいきなり出すとか。

「それって、覚悟できてるってことか?」

「………!」

「できてないなら、あんまりそういうこと言うのは___」

 私は、逢阪の唇を、自分の唇で塞いだ。

「できてるしっ……」

 我ながら、ぎこちない。もっと色っぽく誘えないものだろうか。

「ああ、そう」

 ニヤリと笑うと、逢阪はノートPCをそっと閉じた。