ノラネコだって、夢くらいみる

「鈴ちゃん。おばあちゃんね、お母さんに頼まれたの」

「…………」

「自分が幸せにできない分、あの子を幸せにしてあげてって」

「………おばあちゃん、私のこと、恨んだんじゃないの?」

「バカなこと、言わないで」

「だって……おばあちゃん、私が産まれなければ、おばあちゃんの娘は今も……」

「そんな風に考えたことは、一度もないわ」

「………!」

「って、言ったら、奇麗ごとになるかしらね。心のどこかでは、ひょっとしたら、鈴ちゃんができなければ鈴音は今も……生きていたかもって思っていたかもしれない。だけどね……産まれてきたあなたは、本当に、ちっちゃくて、可愛くて。だけど一生懸命に生きていた。そんな鈴ちゃんを見て、誰が、いらない子だって思う?思うわけ、ないでしょう」

「おばあちゃん……」

「おじいちゃんなんてね、じっとしていられなくて、安産祈願のお守り買いに走ったり、お祈りしに行ったりしてたんだから」

「…………」

 大粒の涙が頬を伝っていく。

 と、そこに、一人の男性が来る。

「木下です。妻を助けて下さったようで、本当にありがとうございます。あの、茉由は……」

 スーツ姿の男性。正月からお仕事してたのかな?

 木下さんが到着したのを看護師さんが見て、こちらです、と誘導する。

___その時。

 部屋の中から、オギャア、ギャア、と赤ちゃんの声が聞こえてきた。

 産まれたんだ……産まれたんだ、モモの赤ちゃん!!