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「すっごいマンション」

 いちるの家もなかなかのものだが、それ以上に高そうなタワーマンション。

 ロビーはものすごく広いし、床は大理石なんじゃないかってくらいピカピカした石だし。

「どこ、ここ」

「うち」

 え?

「こっちだ」

 手を引かれ、エレベーターに乗り込む。

「いいとこ住んでるじゃない……」

 って、なんで私逢阪の家に来てるの?

「いちるとお前だけだ」

「え?」

「ここに連れてきた、仕事関係者」

「………」

「ちなみに、お前が婚約者とか勘違いしてる女も呼んだことない」

「………!」

 逢阪が電話を取り出して、どこかにかける。

「お疲れ。俺だけど」

 誰にかけているの……?

「行けなくなった。タクシー拾って帰れ。……ああ、そうだな。また飲もう。じゃあな」

 逢阪がポケットにスマホをしまうと、エレベーターが最上階に着く。